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津地方裁判所 昭和42年(わ)73号 判決 1969年5月26日

主文

被告人を禁錮一〇月に処する。

訴訟費用はすべて被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、昭和三六年七月初旬頃群馬県新田郡新田町大字木崎四三番地所在の東武通運株式会社太田支店木崎営業所の自動車運転手に採用され、昭和四一年四月頃から軽油を燃料とするジーゼル内燃機関を装置してある同会社所有の普通貨物自動車(日野改造TH80型・六四年式・車台番号一二九三三・自動車登録番号群馬一い二二一一・原動機の形式DS50型・燃料の種類軽油、最大積載量七、〇〇〇キログラム)に貨物を積載して、右貨物自動車を運転し、主として大阪方面に輸送していたが、同自動車の運転中は、動力を発生させるため、気筒内で急激に圧縮して高温になつた空気に、軽油を噴射して、自然着火爆発させる等して、火気取扱いの業務に従事していた者であるが、右貨物自動車の運転席の左側下部にある長さ約八三センチメートル、幅約一六センチメートルのアイランド・ボードの長方形の開口部にはめ込んで装着してある防風用ブラシが、かねてから損耗磨滅していたため、その隙間から風が吹きあげてきて不快を感じていたので、たまたまその販売先に右ブラシが品切れであつたため、昭和四二年二月二七日頃その代用として、その上に長さ約八九センチメートル、幅約二二センチメートルのゴム板(フラツプを切断したもの)を取リ付け、かつ、右貨物自動車に貨物を積載して、大阪方面等に長距離運送をしようとしたが、このような場合、軽油等を燃料とする内燃機関を装置した自動車の運転を業とする者としては、右エキゾースト・マニホールド(排気多岐管)と、右アイランド・ボードとの間隔は、約二・五センチメートルしかなく、しかも、同自動車を長時間運転したり、長距離の坂等を運転すると右エキゾースト・マニホールド内を通過する排気ガスの温度の上昇に伴い、右エキゾースト・マニホールドも加熱され、これに可燃物を接触させると、それに引火して火災発生のおそれがあるから、前記のブラシと同一規格のものの入手できるまでその取り替えを待つか、あるいは、その代用としてゴム板を使用する場合には、右エキゾースト・マニホールド内の温度の上昇にともない、これが加熱されると、その熱のため、右ゴム板が軟化して右マニホールドに接触する場合があるから、右ゴム板が軟化しても右マニホールドに接触しないように間隔をおいて取り付けるほか、その接触のおそれの有無を十分点検確認するとともに、運転中にゴム等の燻焦する臭気を感知したときは、ただちに運転を中止し、その点検をして、火災発生の危険のないことを確認しなければならない業務上の注意義務があるのに、被告人はこれを怠つて、前記ブラシの代用としてアイランド・ボードの上に前記ゴム板を両端が約三センチメートルはみ出させ、右マニホールドに接触するおそれのある状態で取り付け、かつ、同年三月五日午後三時頃前記貨物自動車にプラスチツク製アイスクリーム用容器の入つたダンボール箱約四〇〇個(価格約一七〇万円)を積載して、交替運転手佐藤孝三郎と共に、同人の先番運転で前記木崎営業所前を出発し、大阪府門真市所在の同社門真営業所に向い、翌六日午前四時頃愛知県弥富町町内で、右佐藤孝三郎と二回目の運転交替をし、被告人が同貨物自動車を運転して、同日午前五時三〇分頃三重県鈴鹿郡関町字坂下地内の国道一号線の通称鈴鹿峠を時速約二〇キロメートルないし二五キロメートルで登坂中、同地内の鈴鹿隧道東入口から約一三三・七メートル手前の地点で、ゴム板の燻焦している臭気を感知したにもかかわらず、その原因や、その燻焦の個所等を確認しないままに運転を継続したため、その頃同地内の長さ約二四五・六メートル、幅員約六・五メートル、高さ制限四・三メートルの馬蹄型の前記鈴鹿隧道内の東入口から約一九・三〇メートル進行した地点において、エキゾースト・マニホールドの過熱のため、前記ゴム板が軟化して、右マニホールドに接触して引火し、右入口から約四〇メートルの地点で発炎するにいたらしめ、同運転室備付けのカーテン、ベツド上の寝具、同室天井等に順次燃えあがらせて、同自動車一台(時価約一五〇万円)およびその積載貨物を焼燬させた外、その炎や煙と、同自動車後部をやや右寄りに停車させていたこと等で、対向自動車の進路を妨げ、反面後続車が、退路を塞いでいたので、別紙一覧表記載のとおり、折柄対面東進しようとして、同隧道内に入つていた宮本泰夫運転の普通貨物自動車外後続の一二台の自動車およびその積載貨物等を焼燬させ、よつて公共の危険を生ぜしめたものである。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

被告人の判示所為は刑法第一一七条の二前段、第一一六条第二項、罰金等臨時措置法第二条第一項、第三条第一項第一号に該当するので、所定刑中金錮刑を選択し、その刑期範囲内で被告人を禁錮一〇月に処し、訴訟費用については刑事訴訟法第一八一条第一項本文によりすべてこれを被告人に負担させることとする。

よつて主文のとおり判決する。

別紙

被害車両等一覧表

<省略>

<省略>

<省略>

注(株)は株式会社の略記号

(有)は有限会社の略記号

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